はい。どうも、漫画好きと言いつつ名作に未着手なほねです。

先日、ついにあの『ポーの一族』を読みました。

単行本ではなく、いわゆる愛蔵版で、3巻セット。

萩尾望都『ポーの一族』1萩尾望都『ポーの一族』2萩尾望都『ポーの一族』3

※愛蔵版の表紙は萩尾望都先生ではありません。東逸子さんです。中世の油絵が現代に発掘されたみたいな雰囲気。

『ポーの一族』は…、うむむ…一度読みでは語ってはいけないのではという気にさせる、壮大なお話でした。

でも感想書きます。

この記事の目次

ざっくり『ポーの一族』とは?

まずは一言でどんな作品か。いろんな要素のある作品なので、いろんな表現があると思いますが、抑えどころはこの辺かと。

14歳でバンパネラとなり、永遠の命を生きる宿命を負ったエドガー少年の孤独と苦悩を描いた作品

14歳といえば、『新世紀エヴァンゲリオン』の搭乗者である少年少女と同じ年齢ですね。

大人でも子供でもない微妙なお年頃。

もう少し幼いと自分の運命に悩まず、自分が持つことになった能力をむしろ楽しめたのかもしれないし、

もう少しでも大人だと、伴侶を見つけて孤独を埋めることができたのかもしれない。

バンパネラになり立ての頃は同じ一族の新婚夫婦を養父母とし、後に妹も迎え入れ、家族として行動していますが、萩尾望都先生、容赦なく家族を消滅させます。

独りになったエドガー君は、同じく孤独を感じ、今いる場所での生きずらさを抱えるアラン君を一族に迎え入れ、しばらく行動を共にしますが…

萩尾望都先生、またまた容赦なくアラン君も消滅させます。

 

永遠の命があると表現しましたが、自己修復できない程の傷を負ったり、吸血鬼がダメなことをされて力を失うとザザーっと砂のように形が崩れ、塵のように風に消し飛ぶ仕組みとなっており、無敵ではありません。

エドガー君は一族の長からエネルギーを受けているためかなり丈夫な様子。

妹はいつも貧血で、アラン君も誰かを一族に迎え入れられるほどの能力はありませんでした。

2人共、一族直系のエドガー君からエネルギーもらってると思うんだけど、弱いのが不思議。もう一度読むとわかるのかなー。

物語の時間の流れと作品の発表年をまとめてみる

ほねが読んだ3巻セットの他にも、別の愛蔵版があるようです。

実はそちらも1冊チラチラ見てみたら掲載順が異なっていました。

どういうこと???

ちょっと編集方針まで考察するのは難しそうなので、ここではほねが読んだ3巻セットについてまとめてみます。

登場人物やあらすじはWikipediaが詳しいのでご参照ください。

→Wikipediaはこちら

愛蔵版の掲載順 副題 物語の時代 作品発表年
1-1 すきとおった銀の髪(チャールズが30年後メリーベルに再会する) え?いつ頃? 1972年1月
1-2 ポーの村(メリーベルがグレンスミスに撃たれて怪我をする) 1865年7月 1972年5月
1-3 グレンスミスの日記(日記はマルグリッドへ。甥ルイスの学校にエドガー現れる) 1899年~1959年 1972年6月
1-4 ポーの一族(養父母、妹を失いアランを仲間に) 最終ページは1959年 1972年10月
1-5 メリーベルと銀のばら(エドガー幼少期~メリーベルもバンパネラになるまで) 1740年頃 1973年12月
2-1 小鳥の巣(アランもバンパネラ。「ポーの一族」最終ページの続き。ガブリエル・スイス高等中学校。マチアス、キリアン、テオ登場) 1959年 1973年5月
2-2 ペニー・レイン(「ポーの一族」の続き。アランがバンパネラになるところ。エドガーが馬車の夫婦を襲い、その子供リデルが登場) 1879年より前 1975年3月
2-3 ピカデリー7時(アランとポリスター卿を訪ねたが消滅していた。ラトランドへ向かう) え?いつ? 1975年6月
2-4 はるかな国の花や小鳥(庭でバラを育てるエルゼリ。エドガーをユニコーンと呼ぶ) え?いつ? 1975年7月
2-5 一週間(エドガーの留守中にカレンとジューンと遊ぶアラン) え?いつ? 1975年10月
2-6 モードリン(ウイルおじさんがクレーじいやを殺すのを目撃したモードリンがウイルに狙われるけど間一髪で助かる話) 無関係の話だよね? 1969年5月
2-7 白き森白き少年の笛(森の井戸に落ちた笛を取ろうとして死んだエディの亡霊がマリアの前に現れて自分を見つけさせる話) 1900年。無関係の話だよね? 1971年9月
2-8 ヴィオリータ(ヴィオリータを追いかけるが捕まえられないいろんなヨハンの話) え?いつ? 1976年10月
3-1 エヴァンズの遺書(遺書は1780年。事故で一時的に記憶喪失になったエドガーを連れ戻しに来たメリーベル。 1820年 1974年11月
3-2 ランプトンは語る(エドガーに縁のある人々がクエントン館に集まって会合。1888~1889年にクエントン卿が描いた顔はエドガーの『ランプトンの肖像』等の作品が登場) 1966年7月※この作品の最後に年表がある 1975年5月
3-3 リデル・森の中(2-2「ペニー・レイン」の後。エドガー、アランと暮らしたリデルの話) 1879~1887年 1975年4月
3-4 ホームズの帽子(「ランプトンは語る」で会を主催したオービンの若いころ。エドガーに出会う) 1934年 1975年9月
3-5 エディス(エドガーに似ているエディス登場。古物商を営む兄弟に養われている。オービンは得意客、最後エドガーは死んだと考え筆を取る) 1976年頃 1976年4月
3-6 白い鳥になった少女(パンを踏んで沼の底に沈んだ少女インゲが鳥になり罪を償う話) 無関係の話だよね? 1971年10月
3-7 妖精の子もり(森で出会った少女が実は母の再婚相手の娘だった話) 無関係の話だよね? 1972年3月
3-8 雪の子(冒頭に出会った少女が実は心臓を患う少年だった話) 無関係の話だよね? 1971年1月
3-9 月蝕(森で少女と出会った金毛の狼が人に化けて婚姻を結ぶが生まれた子供は月の夜に父親が巨大な狼に見えるようになる話) 無関係の話だよね? 1979年12月

スケさん
まとめてみたけど、頭ぐちゃぐちゃ!!
時間がわかる中で物語の時系列で並べてみた方が良かったかも。
やり直してみます。

物語の時間に合わせて並べてみた

以下、物語の時間に合わせて並べ直してみました。
物語の時代 副題 作品発表年 愛蔵版の掲載順
1740年頃 メリーベルと銀のばら(エドガー幼少期~メリーベルもバンパネラになるまで) 1973年12月 1-5
1820年頃 エヴァンズの遺書(遺書は1780年。事故で一時的に記憶喪失になったエドガーを連れ戻しに来たメリーベル。 1974年11月 3-1
1865年7月 ポーの村(メリーベルがグレンスミスに撃たれて怪我をする) 1972年5月 1-2
最終ページは1959年 ポーの一族(養父母、妹を失いアランを仲間に) 1972年10月 1-4
1879年より前 ペニー・レイン(「ポーの一族」の続き。アランがバンパネラになるところ。エドガーが馬車の夫婦を襲い、その子供リデルが登場) 1975年3月 2-2
1879~1887年 リデル・森の中(2-2「ペニー・レイン」の後。エドガー、アランと暮らしたリデルの話) 1975年4月 3-3
1899年~1959年 グレンスミスの日記(日記はひ孫のマルグリッドへ。甥ルイスの学校にエドガー現れる) 1972年6月 1-3
1934年 ホームズの帽子(「ランプトンは語る」で会を主催したオービンの若いころ。エドガーに出会う) 1975年9月 3-4
1959年 小鳥の巣(アランもバンパネラ。「ポーの一族」最終ページの続き。ガブリエル・スイス高等中学校。マチアス、キリアン、テオ登場) 1973年5月 2-1
1966年7月※この作品の最後に年表がある ランプトンは語る(エドガーに縁のある人々がクエントン館に集まって会合。1888~1889年にクエントン卿が描いた顔はエドガーの『ランプトンの肖像』等の作品が登場) 1975年5月 3-2
1976年頃 エディス(エドガーに似ているエディス登場。古物商を営む兄弟に養われている。オービンは得意客、最後エドガーは死んだと考え筆を取る) 1976年4月 3-5

大スケさん
ふむ。当時で言う「現代」でちょうどエドガーが消えて終わったんだな
これはファンの皆様、めちゃくちゃ喪失感だったのでは…。
最後に偶然? 通りがかるおそらくアーサー・クエントン卿と同じく、「バカな」「バカな」「どこかにいるにきまっている」
そんな心情だったのではないかと。
そして、40年ぶりの新作! 歓喜しますね。
私が読んだ愛蔵版はamazonでもなかなか見つからないので新作『ポーの一族~春の夢~』をご紹介しておきます。

優雅で浮世離れした雰囲気。凄まじい手描きの熱量

多少整理できたら何だかやり切った爽快感。

 

うさちゃん
ちょっと、まともな感想が無くない?
あ、そうだった。
主人公のエドガー君が14歳であることについては最初にちらっと書きました。
自分が連載当時14歳でリアルタイムで読んでいたら、エドガーのクールさ、強さ、一方で自分の宿命に納得し切れていない弱さに切なくなってめっちゃ惚れてた可能性大。
大人びた雰囲気や色気は長い年月を生きて醸し出てきたもの。中性的な魅力にまで昇華されているのは絵柄の世界観かと。
14歳なのでバンパネラでなくても微妙な年ごろなのですが、子供らしくない子供、子供でいられない子供というのは何でしょ。幸・不幸は外野が勝手に決めつけるものではないので、何と言うべきか。これも切ないとか、寂しい、やるせないという感情がわいてきます。
実は先に『萩尾望都 作画のひみつ』なる本を読んでからの本作でした。
まだまともに読んだ作品が1つもなく。
少女漫画の巨匠の本を図書館で見かけたからパラパラ読んだ程度でした。
なので自分が関心のある作画についてのコメントだけやたら覚えています。
萩尾先生曰く、「美しいと思う物を集めておいて参考にしている」そうで、例えば「バレエ」の手の形などよく見ているといったことが書かれていました。
ただでさえ、空の表現、コマ割りの仕方など細部が気になるタイプ。
今のようにパソコンで一気に処理することもできない手描きの時代ですから、『ポーの一族』は、「これ全部描いているんだ」「点描すごっ!」と本編読みつつ気になるところ満載。
1ページ当たりのコマ数も多いし、とにかく情報量が多い!
先が気になるのになかなか読み終われないという自分へのじれったさを感じながら読破しました。
『ポーの一族』を読んだ後で『作画のひみつ』を読んだらまた違った発見がありそうです。
てことで、近日、再度『作画のひみつ』を読もうと思います。
萩尾望都作画のひみつ
※書影からamazonへ飛べます。

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